横浜善光寺留学僧育英会趣意書
ゼロからの出発。
師父、大圓武志大和尚が善光寺を開創いたしましてより53年目を迎えておりま す。
師父は善光寺経営基盤のほぼ確立したことを実感し、開創15年を記念して1984 年善光寺海外留学僧派遣育英会を設立しております。
そして当時の設立趣意書にその経緯と趣旨を次のように述べております。 いまや、人類は宇宙時代に入り、時間的にも空間的にもその距離は著しく短 縮され、世界はあたかも一国の観を呈しております。が、反面人類はかつて ない民族、宗教、イデオロギー、地球環境、さらには恐慌に晒され、不安と 絶望の危機に見舞われております。これは明らかに現代社会の悲劇であり解 決の糸口さえ見つからないでいるのです。翻って今日ほど仏陀釈尊の教法宣 布を必要とするときはありません。しかるにわが国は、世界最大の仏教国で ありながら、仏教界は遺憾ながら世界の大勢に即応、教化の実を挙げる態勢 に欠けているように思います。世界の中の日本、日本の中の仏教、仏教と私、 その自分の存在を認識するとき、唯悩んでいるだけでは罪が深すぎます。「ど うする、どうしたらいい」。寺の開創時、私の信念は一体なんだったのか煩 悶しました。日本の仏教は社会参加、社会貢献、実践力に欠けているという、 世界の非難を私は敢えて率直に甘受します。私なりにみ仏のご加護のもと脚 下を反省、懺悔しながらその使命と責任を果たすべく、開創時の精神に立ち 還らなければなりません。また設立までの経緯について、元来横浜の小さな 寺、所詮、大は望めません。それでもひとりでやれることは、あまりにも小 さく限りあります。だから衆知を集める必要があります。さいわい檀家、檀 信徒各方面、かかわる方々から強力なご支援とご浄財により設立、派遣でき る目処が立ちました。かつて私は自らの信念に駆り立てられ、大本山永平寺 僧堂安居を修し、その足で仏舎利奉拝日本一周行脚を敢行、さらには仏教の ― 2 ― 原点、インドに赴き仏蹟を巡拝、帰途タイバンコクに上座部仏教比丘として、 九旬安居を修し、さらに渡米、ロスアンゼルス禅センターで2年間欧米人に 開教師として参禅教化に努めました。この間いただいた尊い仏縁がその後の 私の生き方と人間形成の土台となったことを覚えます。この尊い仏縁を、若 い人々にも経験してもらいたいのです。そして機会提供に精進したいという 念願、それこそが私の育英会設立の根本の動機であります。仏天のご加護に より「法輪転ずるところ、食輪おのずから転ぜられる」こととなり海外留学 僧派遣も制度として善光寺自力以って軌道にのせることができました。 以来現在まで海外からの受け入れと派遣は、延べ146名に及び、留学僧が巣立っ たことになります。育英生の雄飛は世界規模となり、今や各国各界で大活躍いた だいています。 志望されるお方には国籍、宗旨、男女を問いません。要は仏道を通じて世界に 貢献したいというグローバルな視野をもち、仏教の興隆、世界の平和を実現した いという、道心堅固な人材に集まっていただくことを念願しています。
令和4年6月1日
成寿山善光寺
住職 黒 田 博 志
横浜善光寺留学僧育英会役員(敬称略)
名誉顧問
南澤 道人[大本山永平寺貫首]
五十嵐卓三[山形 善宝寺前住職]
黒田 泰弘[本寺 光真寺住職]
顧 問
木村 清孝[鶴見大学元学長・函館 龍宝寺住職]
佐々木宏幹[駒澤大学名誉教授]
福田 孝雄[山形 高松寺住職]
山口 晴通[小田原 成願寺住職]
理事長
黒田 博志[横浜善光寺住職・第16回育英生]
理 事
新美 昌道[東京 福厳寺住職・大本山總持寺嶽山会会長]
安藤 嘉則[駒沢女子大学学長・小田原 潮音寺住職・第6回育英生]
岩波 弘道[横浜 福泉寺住職・第3回育英生]
山口 義男[横浜善光寺総代]
参 与
ダンカン・隆賢・ウィリアムス[第14回育英生・南カリフォルニア大学教授]
真野 大成[第14・15回育英生]
胡 建明[第12回育英生・中国天童寺顧問兼駐日代表]
藤田 一照[第9回育英生・元曹洞宗国際センター所長]
育英会 設立趣意
善光寺を開創して15年を閲しました。ゼロからの出発ではありましたが、法輪轉ずるところ、食輪自ら轉ぜられております。これ正に佛天の御加護と大方の諸大德諸賢の御協力御支援の賜と感謝にたえないところであります。 宗祖を通して釈尊に還ることが私の宗教生活の帰趨とするところであり、この信念が私をして佛舎利奉拝日本一週行脚、インド佛蹟巡拝、そしてタイ国留学に駆り立て、更には欧米人と参禅を共にすべくアメリカへ向わせたのであります。そしてこの間に頂戴した尊い佛縁が、私の今日をあらしめる土台づくりとなったのであります。 いまや人類は宇宙時代に入り、時間的にも空間的にも距離は著しく短縮され、世界はあたかも一国の観を呈しておりますが、反面、人類はかってない不安と絶望の危機に見舞われております。これは明らかに現代社会の悲劇であり、今日ほど佛陀釈尊の教法宣布を必要とするときはないのであります。 しかるに、わが国は世界最大の佛教国でありながら佛教界は遺憾ながら、世界の大勢に即応して教化の実を挙げる態勢に欠けております。ここに海外生活を通して広く世界に活眼を開く人材育成の重要性を痛感するものであります。 よって善光寺は開創15周年を期して報恩行の一端として、海外に留学僧を派遣し、人材の育成をはかり、もって、佛教を振興し、世界の平和、人類の進運に寄与せんことを願い、海外留学僧派遣育英会を設立するものであります。
昭和59年1月15日
宗教法人 成寿山善光寺 住職
横浜善光寺留学僧育英会
初代理事長 黒 田 武 志
名称変更について
「善光寺海外留学僧派遣育英会」設立趣意書に述べてありますように、当初は日本人留学僧の海外派遣を目的として発足したのでしたが、海外よりの留学希望者が逐年増加しており、派遣と受け入れの双方を考慮して対応せざるを得なくなりました。 次に、事業主体を単に「善光寺」としたため、かの有名な善光寺と誤解する向も少なくありません。 それらの事情を勘案して、次のように名称を変更致しました。 尚、これに伴い、規定・細則の関連条項も名称変更の線に沿って改正しました。
記
新名称 : 横浜善光寺留学僧育英会
平成5年2月6日
理事長 黒田武志